1藤迫茶園の歴史と考え方 2生産地 3生産方法 4加工方法 5情報公開(エビデンス)
除草剤・防虫剤を含む一切の農薬を使用しない
草も虫も、農園の土を食べにくるイノシシなどの動物も農園を形成する大切な仲間です。
硝酸態窒素をはじめとする一切の化成肥料を使用しない
硝酸態窒素などの化成肥料は環境を破壊し、ひいては私たちの体にも脅威となります。
過度な品種改良を受け入れない
次世代に引き継げない遺伝子を持つものを人の体に入れて良いとは考えていません。
重量のある大型機械導入は行わない
茶樹の根の成長を妨げ、茶樹が持つ本来の力が失われます。
私たちは、自然環境を第一に考える農園経営を行っています。
1946年から大切に育てている樹齢70年を超えるお茶の樹
在来品種(固定種)をメインに、在来選抜品種である「やぶきた」「たまみどり」を、約5haの敷地(東京ドーム約1個分)で育てています。この規模での有機茶栽培は全国でも希有です。
よく聞かれる「農薬を使用せず虫はつかないのか??」・・・・答えは写真の通り害虫も病気も皆無です。
それは、お茶自体が大変強い抗酸化力を有しており、本来「虫も食べない」と言われるほどの強い植物だからです。ただし、クモやテントウムシなどの益虫は棲んでいます。しかし、彼らはお茶の葉には興味がありません。彼らは蛾やアブラムシなどの害虫の天敵であり、寄って来た害虫を捕食してお茶の木を守ってくれています。
つまり、農薬や殺虫剤を使わなくても食物連鎖で病害虫から守られているということです。農薬などを使えば彼ら益虫まで殺してしまい、農薬を使わずには作物を守れない(作れない)という悪循環に陥ってしまいます。
当園のような自然に近い栽培の健康なお茶には、農薬などの余計なものは必要ないのです。
なぜ当園と他の農園ではお茶の樹の形状が異なるのでしょうか
大型農業機械を導入しているか否かの違い
下写真左が一般的な農園の形状で、右が当社有機茶園形状です。一般的にフラットなのに対し、当社有機茶園が扇型になっています。この違いは、「導入している茶摘機械(及び管理機)の違い」によるところが大きいのです。
※慣行農法と呼ばれる農薬や化学肥料を使用した非有機農業の農園の多くがフラットな形状のお茶の樹です。
現在主流の「乗用型」は、一人で作業ができる利点はあります。しかし、重量が1トンを超えるものも多く、どうしても地面や茶樹の根を踏み固めてしまいます。したがって、根に負荷をかけしまって十分に根を張り巡らすことが出来ず、大きく丈夫に育ちません。機械のサイズに茶樹の大きさを合わせていると言っても間違いではないかもしれません。
当園では、人の手は多くかかりますが、地面と根への負荷をなるべくかけないように、現在でも手摘みか可搬式の小型茶摘機(及び管理機)を使用しています。農薬や重量の重い農機を使用しないため土が柔らかく、他の畑にはいないミミズやモグラが生息しています。彼らが活動することで畑を耕し、空気(酸素)やミネラルが豊富な柔らかい土壌を保ってくれています。
土壌が柔らかいことで茶は根を元気よく張り巡らし、地上にも樹勢があり、健全に育ちます。ちなみに、写真からも分かりますが、当園の茶樹は大きくボリュームがあり、扇形に整えるため表面積が広くなり、収穫量も乗用型茶摘より5%以上多くなります。
慣行(非有機)農園から有機農園を守るための策
下写真左が、慣行(非有機)茶園、右が当社有機茶園です。間に見えるのが、当社有機農園一列を飛散農薬(及び化成肥料)被害から守る緩衝(防風林)として犠牲にしています。
緩衝犠牲茶樹(防風林)の高さは約3mあります。他農家の非有機農園(茶だけでない)と接触している当社有機農園では、上の写真のような対策をしています。見にくいですが、当社有機農園のところには草が生えているのが分かるでしょうか?草を刈った後の乾いた草も見えますか?
比べて、左の非有機農園には草が生えていません。見た目にきれいで手入れが行き届いています。しかしそれは除草剤をはじめとする農薬によるものと、大型機械により踏み固められていることによるものです。
独自開発の有機肥料
独自開発(発見)したバクテリア数種を共存させ、主に熊本県天草産の魚・海藻類(海のミネラル補給)と蛋白源であるオカラを有機分解させて作っている。これを農園に定期的に補充しています。
有機栽培と無農薬栽培とは違います。そして有機無農薬栽培もやはり違います。この自社開発の有機肥料には、多くのミネラルが含まれています。そのミネラルが茶樹成長に活かされています。もちろん材料に至るまで有機JAS認証を得ています。
遮光による品質の向上
本来は霜よけに使用する「寒冷紗」ですが、その遮光性を利用して一定期間遮光し、お茶の品質を向上させています。遮光することにより、茶葉の色が濃くなり、味も深くなります。カフェインの生成を抑制し、旨味成分となるテアニンが多く生成されます。
奥に見えるのが寒冷紗(かんれいしゃ)です。茶樹3列✖20mの大きさがあり、一定期間遮光し茶摘の当日まで被覆したままにしておきます。この作業が本当に重労働ですがお茶の味や色を向上させるためには必要な作業です。本来は「藁掛け」したいのですが、安全な藁(農薬がかかっていない。放射性物質が検出されないなど)がなかなか見つからないので残念です。
自らの遺伝子を引き継ぐ茶の実の存在
現在主流の品種改良されたお茶は、花が咲きにくいと言われています(茶の実がなるとお茶の品質が劣ってしまう)。当社有機農園のお茶は、茶の白い花が咲き茶の実もなります。お茶の実が生ったからといって、お茶の品質が劣ることは今現在当農園では確認できていません。自然が良いんじゃないでしょうか。
茶の木には自家不和合性(同じ木の雄しべと雌しべからは実が成ることはなく、別の木であっても同じDNAを持つ木からは実が成らないという性質です)があります。当社有機農園は在来品種の実生栽培(種から育てる)からスタートしていますが、きっと気の遠くなるような長い歴史の中で繰り返し行われてきた受粉によって遺伝子が受け継がれてきたのでしょう。
草、虫、動物、茶園のすべてが共存する茶園を
下の写真は、オフシーズンのお茶園です。草がたくさん生えていて、そこには虫がいてひとつの世界を作っています。有機無農薬スタート時、よく周りの慣行農業をされている農家さんから「無農薬でやっているから、そっちの虫がうちの農園に来る」「草ぼうぼうでお茶がだめになる」とよく言われていました。
今では逆です。「周りの畑の虫たちが行き場をなくしたけん、内の畑で面倒みよるとよ。」と、当園の主は言います。
最低限の茶園管理は行いますが、基本的にそのままの自然環境を大切にしています。オフシーズンは出来る限り自然に任せ、虫や草、そしてイノシシやシカ、キジなどの動物が、安心して動ける環境を作っています。私たちは、その恩恵を少しだけ分けて頂く。人は経済という概念がありますが、自然環境には関係のないことです。決して人の傲慢で自然環境を破壊してはなりません。
全国茶生産団体連合会の平成26年度データによると、年間86,000トン生産されるお茶(荒茶)のうち有機といわれるお茶は、2,323トン、割合にして約2.7%です。製品となった(加工された)有機緑茶は、1,595トンしかありません。当社農園の取り組みは、自然環境を守っていく農業としては、本当に微々たる力です。多くの農園が有機無農薬農業に取り組み、そして一般消費者の方々も、「ただ安全だからJAS(有機)」から昇華し、「環境を守る取り組みをしている商品」として有機への取り組みを理解して頂けたら大変うれしいです。