4 茶摘みから加工まで


60年以上大切に整備し続けた機械たち

そして熟練の技を持つ茶匠

彼らの力で有機茶の加工は行われています。

製造工程に移る前に、少しだけ当農園の茶摘風景を・・・

茶摘は、乗用型大型茶摘機械ではなく、可搬式小型茶摘機械を使用して土壌に負担をかけないようにしています。

2サイクルエンジン搭載で、混合油を使用しています。乗用型茶摘機は、キャタピラを動かしている動力と葉部分を動かす動力が合わせて二つありますが、この可搬式機械は1動力のみなので、燃費効率もよく環境にも優しいです。

覆っていた寒冷紗(遮光幕)を取る

当農園では、一定期間寒冷紗という黒い幕で茶園全体を覆い、茶摘する直前まで覆ったままにしていきます。これを取ってから初めて茶摘が可能になります。

本当にこれは重労働です。草刈はある程度小型の草刈り機を用いれば事足りますが(自動巻取りの機械もあるようですが、当社では導入予定はありません)

さて、やっと茶摘開始です

茶摘シーンを撮っていたこの日は、通常6人で摘み取るところを4人で作業しました。こんな感じで1時間30分フル稼働します。ちょうど90分で2サイクルエンジンの燃料が切れるので、それまではひたすら刈り続けます。

1日最大で3000kgの茶葉の摘み取りがこれ1台で可能です(体力に聞かなければなりませんが)。3000kgの生茶葉からできる粗茶(製茶になる前)は、当社で平均21.5%の歩留まりです。約645kgの粗茶が出来る計算です。

摘んだ茶葉を回収しトラックに載せ工場へ

写真の茶園の上に載っている袋が見えますでしょうか??この日は4人で茶摘行ったということもあり、休憩中にこの茶袋の回収を皆で行いました(もはや休憩ではないような・・・)

摘み取る茶の量にもよりますが、大体1袋10kg程度あります。これを2袋から多い時で4袋を両肩に担いで農園から運び出します。多い時は1人で2000kg担いで出ることもしばしばです。

お待たせしました。ここまで茶摘に費やした時間は、朝9時から昼12時ちょうどまで2クール。計量すると約500kgの茶葉の収穫を行えました。これをトラックに積んで工場に持って帰り、製造工程に移ります。

製造工程

①萎凋作業(いちょう)

 

萎凋作業とは、茶葉摘み取り後製茶工場に持ち込み、送風し熱を冷ましながら茶葉に含まれるアミノ酸の生成を促進させる作業のことです。写真のように下から冷たい風が吹き込む装置の上に並べて萎凋作業を行います。

茶葉は摘み取るとすぐに発酵が始まり熱を発します。したがって、送風機で風を送り発酵のスピードを調整し、じっくりとアミノ酸の生成を促す必要があります。

摘み取りを行った後、すぐに製茶作業に入る加工者が一般的ですが、当社では化成肥料を使用していない分、茶葉のうまみを最大限引き出す必要があるため、約8時間の萎凋時間を設定しています。化成肥料にはうまみ成分を茶葉に醸成する作用が働くので、基本的にこの作業は要りません。ただし、化成肥料により醸成された過剰な旨味成分は硝酸態窒素として製茶後の茶葉に蓄えられます。近年この硝酸態窒素の健康に対する影響が懸念されるようになりました。

②茶葉を蒸し器に搬送

次の深蒸し工程へのスムーズな移行のため、人の手で茶葉を一枚一枚ほぐしながら葉を投入していきます。

当農園の茶葉は肉厚の為、萎凋作業により茶葉同士が引っ付きやすくなっています。それをしっかりとってあげることが重要です。大変地味ですが大切な作業です。

③深蒸ししていく

当社の有機緑茶の大きな特徴は、深蒸しを行っていることです。この蒸し工程が実は緑茶に含まれるカテキンに深く関与しています。蒸し工程は、日本独自で考えられたと言われています。

使用している蒸し器は、そのメーカーがすでに存在していません。もう60年以上も駆動している機械ですから無理もありません。ただ、昔の機械は電子制御されていない(機械的)ので、実はメンテナンスも比較的容易にできるメリットもあります。

④茶葉を冷ましながら

茶打ち機へ

蒸し工程への導線で、送風により茶葉を少し冷やしながら搬送していきます。

ここできっちり目視でばらしていきます。高温で蒸された茶葉は大変熱いですが、ここで冷ましてあげないと、緑茶の鮮明なグリーンが保てない。これも地味ですが大切な作業です。この時にしっかりと蒸されているかを実際お湯で抽出し状態を確認します。

蒸したばかりのお茶の葉を、お湯で抽出して色を見ます。萎凋が長すぎたり、蒸気温度が低すぎたりして蒸しが失敗していると、ちょっと赤みがかった色になるのでわかりやすいです。これは良さげです。

⑤葉打ち機で茶葉を一枚一枚ばらす

揉み作業の準備

葉打ち機とは、次の揉み工程に行くまでに、茶葉一枚一枚をしっかりばらしてあげる作業をする大型の機械です。

別名茶葉プールと言われる通り、この中で先ほど蒸されて少しだけ冷まされた茶葉が、大きなフォーク上の撹拌装置でぐるぐる回ってばらされています。この機械も今は小型化されて効率の良いものになっているようです。

⑥まぁるく円状に有機茶を

揉んでいく

写真は「中揉作業工程」ですが、ここにくるまで、「粗揉み」「重揉み」と2段階の揉み工程が存在します。当社でメインで製造している煎茶(玉緑茶)は、結構大変な工程が存在します。

上のたわしみたいなものがついている機械が、ぐるぐると円状に回転しながら、下の茶葉をゆっくりと勾玉(まがたま)状に成型していきます。玉緑茶のまぁるい特徴はこの工程により作られます。

⑦乾燥させ粗茶(あらちゃ)を作る

サイ乾機という機械で十分に乾燥させていきます。サイ乾機の温度は40度ちょっと。ゆっくりと火を入れながら乾燥させていきます。

茶摘から粗茶製造完成まで、長い時間が経ちました。朝からの茶摘&萎凋&粗茶製造で費やす時間は20時間以上です。ここまでの工程で、十分に乾燥されたお茶が粗茶と言われ、区分けでいくと「農産物」の扱いです。この粗茶が農産物として各茶商間で取引され、お茶の加工業者へ渡ります。そこで「火入れ」という作業が行われ、初めて「農産加工品」となります。

有機JAS基準では、他の工場で粗茶加工された有機商品を仕入れても良いことになっていますが、当工場ではその受け入れを原則しておりません。それは、あくまで生産から粗茶製造そして最終加工まで、一貫して行うことによりトレーサビリティを確実なものとし、責任を持つことが重要だと考えているためです。